2020/04/11
ラスベガス整形実習に参加してきました。
2018年12月6日から9日までアメリカ合衆国ネバダ州ラス・ベガスにて整形外科実習を行ってきました。
整形外科とはいわゆる骨折や関節の治療です。
骨折は細かな基本的ルールに則り、治療が行われています。
私は完全に体系的に基礎を把握しているとは言いがたく、抜けている部分があります。
今回はその骨折の基本手技を学ぶことを目的に参加しました。
講師は米国小動物外科専門医であるDr.brain beale、Dr.Hudson、日本人インストラクターとして藤井寺動物病院の是枝先生が務められました。
実習の2日前に日本を出発し、ロサンジェルスで飛行機を乗り換え、ラスベガスのマッカラン空港へ到着しました。移動時間は約11時間。時差は約17時間あり日本の方が進んでいます。ラスベガスは砂漠の中にあります。
12月の気候は過ごしやすく、同時期の高崎市より少し暖かい印象でした。
メイン通りの端にあるホテルに宿泊しました。
ホテルの部屋シンプルな作りです。冷蔵庫もありません。窓は開かない仕組みになっていました。
一説によると観光客をなるべく部屋から出させるため。また窓はギャンブルで負けた人の飛び降り自殺を防ぐためだと言われています。
実習の会場となったのはラスベガスの中心地から車で約15分の場所にあるWVC(西部獣医師協会)の施設であるオークエンドセンターです。
この施設は清潔で広く、ホール、会議室、実習室を有し、実習を行うのに適した施設でした。
本実習の隣の部屋では医師の関節、一般外科の実習も行われていました。
この施設では獣医師、医師の教育、実習が継続的に行われています。継続教育のための施設が常設されており、教育システムの違い、環境整備の違いを感じました。日本も見習うべき点だと感じました。
実習の初日は骨折の治癒機序、脛骨骨幹部骨折に対するラグスクリュー、サークラージワイヤー法、橈尺骨骨折のアプローチ、ロッキングプレートを用いた整復を行いました。
講義・実習は朝8時から開始され、夕方の18時に終了します。昼食の時間はありますが、分単位でスケジュールが組まれていました。座学の後ですぐに講師によるデモンストレーションを拝見し、実際に実習を行います。密度の濃い実習となりました。
また実習にはプラスチックボーンと呼ばれる骨模型と実際の遺体を用いて行いました。
初日の夕食は講師とともに日本料理屋でビュッフェをいただきました(こちらではビュッフェスタイルが多いようです)
会食の合間に講師であるDr.Hudsonと話すことができて楽しいひと時となりました。
Dr.Hudsonは私と年齢がほとんど変わりませんでした。若くして専門医を取られている!!と驚いていると「私くらいの年齢で専門医を取る人は比較的いる」とのことでした。
彼はストレートで専門医を取得しているようです。
ちなみに米国小動物外科専門医の資格は超難関です。日本の獣医師免許とは比較になりません。
米国では獣医大学に入学すること自体が日本以上に難しく、優秀な人たちの中でさらに人気のある外科専門医のコースに入り、症例を経験し、膨大な文献を読み、論文を書き、試験をパスしなければなりません。実習の合間に伺った話でもDr.Hudsonは大変勉強されたとのことでした。
2日目は脛骨、大腿骨骨折のアプローチ、プレートロッド法による整復を行いました。
3日目は脛骨成長板骨折に対するクロスピン、テンションバンドワイヤー法。
上腕骨、腸骨からの骨グラフト採取、骨盤骨折に対するアプローチと整復を行いました。
最終日も時差ぼけが治らず、座学は眠気との戦いでした。
遊ばなかったのかという声が聞こえてきそうです。不思議なもので座学中は眠気が襲ってくるのですが、夜になると少し元気になります。
合間に幸運にもシルクドソレイユのミュージカル「KA」を観ることができました。
この「KA」はショーの舞台が平面だけではなく、舞台が水平から垂直まで可動します。劇中では垂直の舞台を登ったり、急降下したりと重力を感じさせないように演技する俳優の身体能力に驚きました。舞台装置に220億円かかっているそうです。
またラスベガスは都市全体がギャンブルの町です。ホテルの中はもちろん空港の中にもスロットマシンがあります。
少しだけスロットマシーンをしましたがものの1分ほどで20ドルがなくなっていきました。ギャンブルを行う人はアルコール、ソフトドリンクなど無料で振舞われるのですが、オーダーを取られる暇もなく終わりました。もともとギャンブルが好きな方ではなかったのでここでやめました。
また終盤には移動のタクシーのチップがボディブローのように効いてきました。
ラスベガス中心部の治安は良く、危険な思いをすることはありませんでした。メインの通りは24時間明るいそうです。またマフィアが目を光らせているらしくアメリカ国内でも非常に治安がいいとのことでした。
今回は日中に屋外に出ることがなく、砂漠を感じることはありませんでした。
また年に10回しか雨が振らないというラスベガスで2日間、雨に見舞われました。
時期的に涼しく過ごしやすかったのですが、いつか砂漠の灼熱の太陽を経験したいと思いました。
今回の実習で使用したプレート、スクリューはロッキングシステムと言われる非常に固定力の高いシステムです。より確実の骨折を治療に導くために基本を守りながら新たな器具の導入の検討が必要です。
学習の面では知識の整理、会得、技術の獲得に繋がりました。
また,、短い間ではありましたがアメリカ文化に触れることができ、五感を刺激されました。異なる文化に触れることで自身のアイデンティテーを考えることにもつながったようです。見聞を広げることもできたとおもいます。
今回の貴重な経験をさせていただいた病院スタッフの皆様、診察に穴を開けてしまいご迷惑をおかけした飼い主様、ペットのみんなありがとうございました。
より良い獣医療。確実な知識と技術に基づいた高品質の獣医療を提供できるよう精進していきます。
駄文を読んでいただきありがとうございました。また何かの機会にこのような形で情報を共有できればと思います。