2020/04/10
こんにちは安藝動物病院です。
こちらのブログでは日々の診療の様子や思うところなどをつれづれなるままに書かせていただきます。
今回のブログでは、手術の写真などが登場しますので、苦手な方は閲覧にご注意ください。
うさぎさん
高齢のうさぎさん。11歳。以前はこの年で元気な子は珍しかったと聞きますが、飼い主様が一生懸命ケアし、治療していただけるおかげで高齢のうさぎさんが増えてきました。
このうさぎさんは右腕にしこりができて大きくなっているとのことで来院されました。しこりは上腕の筋肉から発生した充実性の腫瘤です。下の方にがっちりくっついています。非常に嫌な予感のする腫瘤です。
レントゲン検査の結果、骨破壊はなく、軟部組織由来の腫瘤だと考えられます。細胞診※では充実性の腫瘤のため細胞がほとんど採取できませんでした。
しこりがあまり良くないものの可能性が高いこと、大きくなるスピードが早いことから切除が望まれること。またその場合は断脚が必要になることなどをお話ししました。悪性腫瘍で再発のリスクが非常に高いと考えられる腫瘤に関しては根治的切除※と言って大きく切除することが望まれます。
また、うさぎさんの11歳というのは非常に高齢で麻酔リスクもわんちゃん、ネコちゃんに比べると非常に高いものになってきます。さらに以前、急性腎不全の既往があるためより麻酔リスクは高いものになると考えられます。
飼い主様はやってあげられることはできるだけやって欲しいとの希望で手術を行うこととなりました。
うさぎ軟部組織肉腫
手術の当日、しこりはさらに大きくなり、さらに肢端に新しいしこりができていました。(写真の肘の上と上腕の筋肉にしこりがあります)
手術は予定通り前肢断脚術を行いました。
腋窩動脈を二重結紮し、前肢断脚術は終了。麻酔からの覚醒も速やかで一安心。
1時間後にはキャベツをハムハムしてくれました。
病理組織学的検査の結果は軟部組織肉腫でした(悪性末梢神経鞘腫が疑われるが、確定診断のための免疫染色にウサギ抗体を使用しているためできないとのこと)
腫瘍細胞は取りきれていることから今回、追加治療は行わず、定期検診をしていくこととしました。
動物たちは前足がなくなったからといって悲しい様子は見せません。
このウサギさんも抜糸時に元気に三本足で歩きまわってくれました。
高齢になってくるに従い、ヒトと同じように腫瘍性疾患が出てきます。以前はフィラリアや感染症、栄養状態の悪化などで早期に亡くなり、今よりもっと腫瘍性疾患は少なかったと考えられます。
また、動物たちがコンパニオンアニマルとして家族一員となってきている背景もあり、治療に積極的な飼い主様がふえてきているような気がします。
高齢になった動物たちには、痛くなく、苦しい時をなるべく少なく、最後までご飯を食べて隣にいて欲しい。そして、亡くなるときは眠るように亡くなって欲しい。自分の子だったらそうあって欲しい。そんなことを毎日考えながら、精進せねばと感じました。
最初のブログから長くなってしまいました。反省。
- 細胞診:腫瘤の一部を細い針などで採取し、腫瘤が腫瘍なのか。腫瘍ならどんなタイプの腫瘍なのか診断すること。その後治療の重要な判断材料となる。
- 根治的切除:今回は前肢を肩関節ごと切除した。腫瘍切除方法には腫瘍内切除、辺縁部切除、広範囲切除とある。腫瘍のタイプに応じて切除範囲を決定する。